まず押さえたいポイント

5-デアザフラビンは、ビタミンB2の骨格の一部を置きかえて作られた化合物です。サプリの原料として名前が挙がるのはTND1128という一種で、2021年から3本の論文が出ています [1] [2] [3] 。

3本はいずれも培養細胞とマウスを使った基礎研究で、人を対象にした試験は見あたりません。

なぜ「エイジングケア」と関係するの?

細胞の中には、ミトコンドリアという小さな器官があります。食べたものから取り出した電子を順番に受け渡し、その流れを使ってATPというエネルギーの通貨を作る場所です。年をとるとこの働きが落ちていくことが知られていて、エイジングケアの話題ではよく登場します。

TND1128は、自分で電子を受け取ったり手放したりできる性質を持つ化合物です。論文の著者らは、この性質によってエネルギーを作る流れに加わり、ミトコンドリアの働きを後押しするのではないかと考えています [3] 。

ビタミンB2の骨格から作られたTND1128が、細胞のミトコンドリアでエネルギーを作る流れに関わると考えられていることを示した図

NMNやニコチンアミドリボシドは、NAD+という補酵素の材料を補うという道すじで研究されてきました。TND1128はNAD+に変わる材料ではなく、電子の受け渡しそのものに加わる想定という点が違います。

研究では何がわかっている?

  • 培養したマウスの海馬の神経細胞にTND1128を加えた2021年の研究では、軸索と樹状突起の枝分かれが増え、興奮性シナプスの数が増えたと報告されています [1] 。同じ実験の中でβ-NMNとも比べられました。
  • マウスに皮下注射したあと22時間ほどで脳スライスを作り、高濃度のカリウムでカルシウムを負荷した2023年の研究では、TND1128を投与した群で細胞質とミトコンドリアの両方のカルシウムの動きが量に応じて和らいだと報告されています [2] 。
  • 同じ2023年の研究でβ-NMNを投与した群では、細胞質側では量に応じた変化があったものの、ミトコンドリア側では統計的に有意な差が出ませんでした [2] 。使われた量はTND1128が0.01・0.1・1mg/kg、β-NMNが10・30・100mg/kgです。
  • マウスに腹腔内投与した2024年の研究では、10mg/kgを24時間前に投与した群でミトコンドリアの膜電位が高くなったと報告されています [3] 。著者らは、必要に応じてATPを作る働きが進んだと解釈しています。
  • 3本とも著者らは結びで「薬の候補」として位置づけており、脳の病気で弱った神経を助けられる可能性に言及しています [1] [2] [3] 。

人での試験はどこまで進んでいる?

臨床試験の登録データベースClinicalTrials.govで「deazaflavin」「TND1128」を検索しても、2026年9月時点で該当する試験は登録されていません [4] 。論文データベースEurope PMCで臨床試験に分類される報告を探しても、見つかりませんでした。

一方、日本では2024年4月に、この素材を配合したサプリの発売を知らせるプレスリリースが出ています。そこには「ミトコンドリア活性においてNMNの数十倍のパワーをもつ」と書かれていますが、どの実験の何と何を比べた数字なのかは示されていません [5] 。

取り入れ方の目安

  • 量の目安になる数字がありません。人での試験がないため、多い・少ないを判断する基準そのものがない状態です。
  • 食品として食べられてきた実績のない物質です。長く飲み続けたときに何が起きるかは、まだ調べられていません。
  • 同じNAD+まわりで人での試験が報告されている成分としては、NMNとニコチンアミドリボシドがあります。
  • 持病のある方、薬を飲んでいる方、妊娠・授乳中の方は、利用前に医師にご相談ください。