葉酸サプリの棚に「活性型葉酸」「メチル葉酸」「5-MTHF」という表示が並ぶようになりました。同じ葉酸なのに、活性型の製品は値段が高めです。

違いは葉酸の型にあります。そして日本の公的な案内が示す「1日400µg」という数字は、どの型を前提にした数字なのかを確認できます。

葉酸サプリには合成葉酸とメチル葉酸の2つの型があり、公的な案内の1日400µgは合成葉酸の重さで示されていることを表した図
葉酸サプリには合成葉酸とメチル葉酸の2つの型があり、公的な案内の1日400µgは合成葉酸の重さで示されていることを表した図

公的な「400µg」は合成葉酸の重さで決まっている

日本の食事摂取基準には、葉酸の数値表に脚注が付いています。「妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)を400μg/日摂取することが望まれる」という脚注です [1] 。

「通常の食品以外の食品に含まれる葉酸」は、公的な解説では「狭義の葉酸」と呼ばれ、サプリメントや強化食品に使われる葉酸を指します [1] 。

そして数値表そのものにも、別の脚注があります。この表の数字は「プテロイルモノグルタミン酸の重量として示した」ものだ、という注意書きです [1] 。プテロイルモノグルタミン酸というのが、サプリでよく使われる合成葉酸の化学名です。

400µgは、合成葉酸の重さで決められた数字です。とる時期も具体的で、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間にとることが望ましいとされています [1] 。

2つの型は、体に入るまでの道すじが違う

食品に含まれる葉酸は、グルタミン酸がいくつもつながったポリグルタミン酸型です。消化のあいだにグルタミン酸が1つだけのモノグルタミン酸型に切り分けられてから、小腸で吸収されます [1] 。

サプリや強化食品に加えられる合成葉酸は、はじめからモノグルタミン酸型として作られたものです [1] 。ただし、そのままでは体内で利用されません。還元という段階をいくつか通って、はじめて使える型になります。

メチル葉酸(5-MTHF)は、その先まで進んだ型です。血液を流れている葉酸は、ほとんどがこの型になっています。

この還元効率に個人差を生む要因の一つが、MTHFR遺伝子(葉酸を変換する酵素の設計図にあたる遺伝子)です。働きが弱めのタイプを持つ人はめずらしくありません。だったら、はじめから変換後の型を飲めばよいのではないか。活性型をうたうサプリの売り文句は、ここから来ています。

型そのものの説明はメチル葉酸と葉酸にまとめました。

血中の葉酸で比べると、活性型が上まわる

2009年の試験は、MTHFR遺伝子のTT型16人とCC型8人の健康な女性に、合成葉酸400µgとメチル葉酸416µgを1回ずつ飲んでもらい、8時間後まで血液を測りました [2] 。

結果は、どちらの遺伝子型でも、メチル葉酸のほうが血中の葉酸の総量と最高濃度が高く、最高濃度に達するまでの時間も短いというものでした [2] 。

この試験は、変換されないまま血液に残る葉酸も測っています。合成葉酸を飲んだあとには通常みられ、メチル葉酸ではまれだったと報告されています [2] 。

ここまでなら、活性型のほうが有利に見えます。

ホモシステインで比べると、順番が入れ替わる

同じ研究グループが2002年に行った試験は、健康な若い女性160人を、合成葉酸400µg・同じモル数のメチル葉酸480µg・プラセボの3群に分け、8週間続けました。測ったのはホモシステイン(アミノ酸の一種で、代謝の状態を映す指標として測られる物質)です [3] 。

合成葉酸の群では、3つの遺伝子型すべてでホモシステインが13%以上下がりました。いちばん大きかったのはTT型で、4週後に20%です [3] 。

メチル葉酸の群でもホモシステインは下がりましたが、統計的な差がついたのは4週後のCT型の7%だけでした。著者らは、CT型とCC型では合成葉酸のほうがホモシステインを下げる働きが大きかったと書いています [3] 。

血中の葉酸の量では活性型が上まわり、ホモシステインでは合成葉酸が上まわりました。同じ2つの型を比べても、何を測るかで順番が入れ替わります。妊娠可能な年齢の女性を対象に両者を比べた試験をまとめた2025年の研究も、扱っているのは血液の指標です [4] 。研究の中身は貧血とメチル葉酸に出典つきでまとめました。

「指標が動く」と「公的な数字になる」は別

メチル葉酸を推す立場の総説もあります。2013年の総説は、合成葉酸は200µgを超える量では変換されないまま血液に残ること、還元の力に個人差が大きいこと、メチル葉酸には耐容上限量が設定されておらずビタミンB12の不足を見えにくくしないことを挙げ、葉酸を食品に添加する制度がない国では合成葉酸より良い選択肢だと主張しています [5] 。

ただし、この主張が根拠にしているのは血液の葉酸の指標です。神経管閉鎖障害そのものを評価した比較試験ではありません [5] 。

公的な案内が合成葉酸の量で書かれている背景には、その型で積み上がってきた研究があります。妊娠可能年齢の女性の葉酸摂取と赤ちゃんの神経管の発育については、研究をまとめた要約が出ています [6] 。公的な案内の数字が変わるには、血液の指標だけでなく、神経管閉鎖障害などの健康上の結果を評価した研究が要ります。

遺伝子情報を踏まえた取り組みで、何が示されたか

日本にも、MTHFR遺伝子のタイプを踏まえて葉酸を扱ってきた取り組みがあります。埼玉県坂戸市で2006年から続く葉酸プロジェクトです [7] 。

2026年に報告された長期の評価によると、参加者は遺伝子のタイプを踏まえた栄養相談を受け、葉酸のとり方と生活習慣を見直してきました。参加者888人のうち、血清葉酸が目標(9.5ng/mL以上)に達した人は76.1%、血中の総ホモシステインが目標(7µmol/L以下)に達した人は55.3%だったと報告されています [7] 。

報告されているのは、遺伝子のタイプを踏まえた栄養相談と、とり方の見直し、そして血液の数字の変化です [7] 。サプリの型を選び直した話は出てきません。

日本人の葉酸は、いまどれくらいとれているか

令和元年の国民健康・栄養調査では、葉酸の平均摂取量は男性295µg/日・女性283µg/日で、男女とも推奨量を満たしています [1] 。

気をつけたいのは、妊娠を計画する人の400µgが、この食事の数字とは別枠だという点です。脚注が「通常の食品以外の食品に含まれる葉酸」と書いているのは、食事からとれている分に上乗せする、という意味です [1] 。

とりすぎの線は、合成葉酸について引かれている

合成葉酸は、1日5mg以上とると神経の症状が目立ってくることが知られています。またビタミンB12の不足を血液検査で見えにくくすることから、食事摂取基準では耐容上限量が定められています [1] 。B12不足のサインが隠れる問題は、2008年の総説でも論じられてきました [8] 。

一方でメチル葉酸には耐容上限量が設定されていません [5] 。上限が示されていないことは、多く飲んでよいという意味にはなりません。日本の公的な上限量は、合成葉酸について定められています [1] 。

表示の基準は、これとも別に決まっています。栄養機能食品として葉酸の機能を表示できる含有量は、1日あたり72µg以上200µg以下と決まっています [1] 。妊娠を計画する人への案内の400µgは、この枠の外側の数字です。

買う前に見ておくとよいこと

  • 裏面のµgの数字を先に見ます。公的な案内の400µgは、合成葉酸の重さで決められた数字です [1] 。
  • 時期も数字と同じくらい具体的に書かれています。妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間が望ましいとされています [1] 。
  • 妊娠を計画中に型を変えるかどうかは、自己判断にせず、かかりつけの医師に相談してください。

妊活の時期に意識したい栄養素は妊活(妊娠準備)、葉酸と妊活の研究は葉酸と妊活・マタニティにまとめています。マグネシウムサプリの種類で何が変わるかを扱ったコラムでは、同じように表示が細かく分かれていく話を、吸収の面から追いかけています。

「活性型」は、体に入ったあとの姿を先取りした呼び名です。呼び名が新しくなっても、公的な案内の数字が動いたわけではありません。売り場でまず確かめるのは「活性型」の3文字ではなく、裏面のµgの数と、いつからいつまで飲むかのほうです。型の議論が公的な数字を書き換えるには、血液の指標のその先を調べた研究の積み重ねが要ります。