ザクロ由来の「ウロリチンA」という名前が、エイジングケアをうたうサプリの売り場に並ぶようになりました。国内では、ウロリチンAを10%含む食品素材が2021年5月に製品化されています [1] 。

ただ、そのウロリチンAは、ザクロにほとんど入っていません。

ザクロやベリーに入っているのはエラグ酸。それをウロリチンAに変えるのは腸内細菌で、その菌を持っているかどうかは人によって違います。
ザクロやベリーに入っているのはエラグ酸。それをウロリチンAに変えるのは腸内細菌で、その菌を持っているかどうかは人によって違います。

ザクロに入っているのは、その一歩手前の成分

ザクロ・いちご・ラズベリー・くるみなどに含まれているのは、エラグ酸とエラグタンニンというポリフェノールです。これが腸に届くと、腸内細菌が別の物質に作り変えます。そうしてできるのがウロリチン類で、そのひとつがウロリチンAです [2] 。

もとのエラグ酸は吸収されにくく、腸内細菌が作り変えたあとのウロリチン類のほうがずっと吸収されやすい、と報告されています [2] 。「ザクロを食べる」と「ウロリチンAが体をめぐる」のあいだには、腸内細菌という一段階が挟まっているわけです。

作れるかどうかで、人は3つのタイプに分かれる

その一段階を担える菌を持っているかどうかは、人によって違います。研究者は、どのウロリチンができるかで人を3つのタイプに分けました。ウロリチンAができるタイプ、ウロリチンBなどができるタイプ、そしてどれもできないタイプです [2] 。

割合は、調べた集団によってかなり変わります。健康な中国の若者35人を調べた報告では、ウロリチンAを作るタイプが54.3%、ウロリチンBなどを作るタイプが31.4%、どれも作らないタイプが14.3%でした [3] 。ただし35人の結果で、対象も若者に限られています。日本人の割合を示した論文は、公開されているものの中には見当たりませんでした。

似た構図の話を、このサイトでは以前にも取り上げています。大豆イソフラボンから腸内細菌が作るエクオールです。ウロリチンの研究者も、この2つを並べて「どちらも作れる人と作れない人がいる」点が共通すると書いています [2] 。この個人差があるために、ウロリチンAをそのままサプリにした商品が出てきました。

体の中では、何をしているのか

ウロリチンAの研究は、傷んだミトコンドリア(細胞の中でエネルギーをつくる小さな器官)を回収する働きに集まっています。古くなった部分を回収して作り直すこのしくみをマイトファジーと呼び、ウロリチンAは、その働きを促す物質として調べられてきました [4] 。

人に飲んでもらった試験は2019年に始まりました。運動習慣のない高齢者に1日500mgまたは1000mgを4週間とってもらい、安全性を確かめたうえで、血液中の指標と骨格筋の遺伝子の出方が動いたことを報告しています [4] 。身体機能は、この段階ではまだ評価されていません。

体の動きを測った2つの試験は、主要な評価項目で差がつかなかった

2022年に、体の動きを測った試験が2つ出ました。

  • 65〜90歳の66人が1日1000mgを4か月続けた試験。あらかじめ主要な評価項目と決めていた6分間歩行距離と、手の筋肉のATP産生量(ATPは体を動かすためのエネルギーのもと)は、いずれもプラセボ群との差が認められませんでした。二次的な項目である筋持久力、つまり疲れるまでに筋肉を何回収縮できるかは、2か月の時点でプラセボより増えていました [5] 。
  • 中年の成人が2つの量で4か月続けた試験。こちらも主要な評価項目だったピークパワー出力では差がつかず、筋力の測定値がおよそ12%高い、という結果でした [6] 。

「主要な評価項目では差がつかず、二次的な項目で差が出た」という形が2回続いています。あらかじめ決めた評価項目で差が出なかったあと、ほかに測った多くの項目のどれかに差が出ることは、偶然でも起こります。二次的な項目の差だけで効果を判断することはできません。

2026年のまとめでも、統計的な結論は出ていない

2025年12月までの比較試験を集めた2026年の報告では、次のように整理されています。条件を満たした試験は5件・のべ236人。結果を統合できたのは6分間歩行距離だけで、それも2件分でした。統合した結果ではプラセボより17.03m長かったものの、ばらつきの幅は-5.33mから39.40mにまたがり、統計的に有意な効果は確認されていません [7] 。

筋力や筋持久力については、対象者・量・測り方が試験ごとに違うため数値をまとめられず、著者らは「再現された効果ではなく、仮説を立てるための手がかり」と位置づけています [7] 。

人での研究5件・のべ250人を2024年に整理した別の報告も、似た書き方をしています(採択した試験の条件が違うため、件数が同じでも人数は一致しません)。筋力と筋持久力の値は増えたが、歩行などの体の動きや、心臓・血管の指標には差が出なかった。ミトコンドリアが新しく作られる量や、腸内細菌の構成も変わらなかった [8] 。

売り場で見るなら、まず「何mg入っているか」

研究で使われた量は、1日10mgから1000mgまで幅があります [8] 。体の動きを測った2022年の2つの試験は、いずれも500mgと1000mgでした [5] [6] 。

日本で使われている素材はウロリチンAを10%含むもので [1] 、それを配合した商品の表示量は数mgから10mg台のことがあります。「ウロリチンA配合」という文字は同じでも、配合量には開きがあります。ラベルのmgを見れば、研究で使われた量との差が分かります。

筋肉の外でも、試験は始まっている

2025年には免疫を調べた試験が出ました。健康な中年50人が1日1000mgを4週間とったところ、血液中のT細胞(免疫の働きを担う白血球の一種)の構成と、その細胞が脂肪をエネルギーに変える能力の指標が動きました [9] 。測っているのは血液中の細胞の状態までで、体調がどう変わるかは評価されていません。

食品から近づくなら、ザクロとベリーとくるみ

エラグ酸を含む食品は、ザクロ・いちご・ラズベリー・くるみなどです [2] 。そこから先、腸内細菌がウロリチンAまで作れるかどうかを一般に確かめられる検査は、いまのところ見あたりません。それでも果物とナッツには、ポリフェノール以外の栄養も含まれます。

成分そのものの解説はウロリチンAに、足腰との関係で報告されている内容は足腰の衰えとウロリチンAにまとめました。

ウロリチンAの人での試験は、5件・236人まで来たところです。今後、対象者数や試験数が大きく増えたとき、現在の手がかりが再現されるかどうかが見どころになります。