「たんぱく質はもう足りている。次は食物繊維だ」。米国のSNSでは、食物繊維を1日40〜50gを目標にたっぷりとる食べ方が「ファイバーマキシング(fibermaxxing)」と呼ばれ、2025年ごろから広まりました。米NBCは食物繊維を「次のたんぱく質」と紹介し、日本でも2026年に入って小売や健康食品の業界がこの言葉を取り上げ始めています [1] 。流行の勢いはいったん脇に置いて、数字を並べてみると、日本人にちょうどいい増やし方が見えてきます。

日本の成人の平均は1日18.1g。研究の中心的な範囲(25〜29g)までは、あと7gほどです。
日本の成人の平均は1日18.1g。研究の中心的な範囲(25〜29g)までは、あと7gほどです。

増やす方向そのものは、研究の裏づけが厚い

WHO(世界保健機関)の依頼で、食物繊維と健康の関係について185件の観察研究と58件の比較試験をまとめた解析が行われています。食物繊維を多くとる人ほど、死亡や心臓の病気、2型糖尿病などのリスクが低いことと関係し、比較試験では体重やコレステロールの数値が下がったことも報告されました [2] 。便通の面でも、便秘の人では排便回数の増加と関係することが報告されています [3] 。

言葉としての流行は新しくても、「食物繊維を増やすとよさそうだ」という方向は、栄養学で長く積み上げられてきた話です。水溶性・不溶性の違いなどの仕組みは食物繊維の基礎ページと便秘との関係の解説にまとめています。

数字を並べると、ちょうどいい量が見えてくる

  • SNSの流行が掲げる目標は1日40〜50g。
  • 研究でリスク低下との関係が最も大きかった範囲は1日25〜29g [2] 。
  • 日本人の食事摂取基準(2025年版)の目標量は、成人男性で1日20g以上・女性で18g以上 [4] 。
  • 日本の成人(20歳以上)の平均摂取量は1日18.1g(令和6年国民健康・栄養調査) [4] 。

平均的な日本人が目標量に届くには、あと2gほど。研究の中心的な範囲である25〜29gまでは、あと7〜10gです。一方の50gという数字は、データの厚い範囲の外側にあり、そこまで増やすと関係がさらに強まるのかは分かっていません [2] 。日本人にとっての実践は、50gへの競争ではなく、まず「あと7g」を埋める足し算です。

50gを急ぐと、お腹がついてこない

食物繊維を一気に増やすと、腸内の細菌による分解(発酵)が急に進み、ガスやお腹の張りが出やすくなります。増やすときは数週間かけて少しずつ、水分も十分にとるのが基本です。もともとお腹が張りやすい人や、過敏性腸症候群(IBS)の診断を受けている人は、食物繊維の種類によって症状が強く出ることがあるため、主治医や管理栄養士に相談しながら調整してください。

極端な高繊維食には別の側面もあります。食物繊維はお腹にたまりやすいため、食が細い人では食事全体を圧迫して、エネルギーやたんぱく質が不足しやすくなります。「多いほど良い」と突き進む食べ方とは、もともと相性の悪い栄養素です。

「あと7g」は、3か所の見直しで近づける

和食には、食物繊維を補いやすい食材が多く、7gは思ったより小さな足し算で近づけます。数字はおおよその目安です。

  • 白ごはんをもち麦ごはんに置き換えると、茶碗1杯で約2g増えます。
  • みそ汁にわかめ・きのこ・切り干し大根を足すと、1杯で約1g増えます。
  • 間食を菓子からりんご1個やナッツひとつかみに替えると、約2〜3g増えます。

主食・汁物・間食の3か所を見直すだけで、25gはぐっと近づきます。粉のサイリウム(オオバコの種皮からとれる食物繊維)やイヌリン(ごぼうなどに含まれる水溶性食物繊維)を飲み物に混ぜて足す方法もあり、サイリウムは便秘の食事指針でも柱のひとつに位置づけられています [5] 。量の目安や注意点はサイリウム・イヌリンの各ページを参照してください。

ファイバーマキシングという言葉自体は、ほかの流行語と同じようにいつか古びます。それでも「日本の食卓では食物繊維があと少し足りない」という数字は、流行が去っても残ります。50gの記録づくりはSNSに任せて、こちらは今夜の白ごはんをもち麦ごはんに替えるところから。流行の熱は、そのくらいの距離感で借りるのが上手な使い方です。