まず押さえたいポイント

ノコギリヤシは、抜け毛や頭皮環境が気になる人のあいだで知られる植物成分です。注目される理由は、抜け毛のサイクルに関わる「DHT」という物質を作る過程に、ノコギリヤシの成分が働きかけると考えられているためです。研究では髪に関する指標で違いを報告したものがある一方、その多くは少人数の試験で、ミノキシジルやフィナステリドのような医薬品ほどの裏づけはありませんノコギリヤシは食品であり、これらの薬を置き換えるものではありません。

ノコギリヤシの成分が、抜け毛に関わるDHTを作る過程に働くイメージ

抜け毛と「DHT」の仕組み

一本の髪には、生まれて伸びる時期、抜け落ちる時期、新しく生え変わる時期があります。頭皮の奥にある「毛包(もうほう)」というふくろが、この周期を支えています。

このサイクルが乱れる一因として研究されているのが、DHTという物質です。DHTは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、「5α還元酵素(ごアルファかんげんこうそ)」という体内の酵素によって姿を変えたものです。むずかしい名前が並びましたが、流れはシンプルです。テストステロンというもとの物質に、5α還元酵素という係が働きかけると、DHTに変わる。このDHTが毛包に作用すると、髪の成長期が短くなりやすくなると考えられています [1]

ノコギリヤシの脂溶性の成分は、この「5α還元酵素がDHTを作る」段階に関わると考えられています。たとえるなら、DHTという物質を生み出す係の働きに、横から作用するようなイメージです。

研究では何がわかっている?

  • さまざまなサプリ成分を男性型脱毛で比べた研究では、ノコギリヤシのエキスを含む複数の成分で、髪の本数や密度などの指標がどう変わるかが調べられています [1] ただし個々の研究は規模が小さく、医薬品との直接の比較も限られます。
  • ヒトの毛包を使った基礎研究では、ノコギリヤシの脂溶性エキスが5α還元酵素の働きに作用するだけでなく、別の経路でも毛の成長に関わる可能性が示されました [2] これは培養した試料での結果で、人にそのまま当てはまるわけではありません。
  • 髪のうすさが気になる成人60人を対象に、ノコギリヤシ由来の脂溶性成分のエキスとプラセボを6か月間くらべた試験では、エキスを使った群で髪に関する指標に違いがみられた報告されています [3] 1試験・少人数の検討である点はおさえておきたいところです。

取り入れ方を考えるときに

  • 髪のサイクルはゆっくり進みます。仮に取り入れる場合でも、すぐの変化を期待するより、睡眠・食事といった生活面とあわせて一定期間ようすをみる姿勢が現実的です。
  • すでに薄毛の治療を受けている人や、医薬品を使っている人は、自己判断で置き換えず、医師や薬剤師に相談してから取り入れるのが安心です。抜け毛が急に増えた、頭皮にかゆみや赤みがある、といった場合は、まず皮膚科の受診を検討してください。