まず押さえたいポイント

スペルミジンは、小麦胚芽や納豆に多いポリアミンという成分です。細胞の中で古くなった部品を入れ替える働きを後押しする成分として調べられてきました [1] 。

記憶をめぐる人での試験は2つあり、小さいほうでは差が出て、大きいほうでは差がつきませんでした。

なぜ「年齢ともの忘れ」と関係するの?

細胞の中では、古くなったたんぱく質や傷んだ部品を分解して、新しいものに作り直す作業がいつも動いています。この入れ替えのしくみをオートファジーと呼びます。年をとるとこの作業のペースが落ちる、と考えられてきました。

スペルミジンは、この入れ替えを後押しする成分として報告されています [1] 。脳の神経細胞でも同じ作業が行われているため、記憶との関係が調べられることになりました。

スペルミジンが、脳の神経細胞の中で古くなった部品を入れ替えるしくみに関わるとして研究されてきたことを示した図

研究では何がわかっている?

  • 2018年の試験では、もの忘れの自覚がある60〜80歳の30人に小麦胚芽由来のスペルミジンを3か月とってもらいました。記憶の課題の成績は、プラセボと比べて中くらいの差(Cohen’s d=0.77)が出たと報告されています [2] 。人でスペルミジンと記憶を調べた最初の試験です。
  • この結果を受けて行われたのが、100人・12か月の大きめの試験です。1日0.9mgをとった群とプラセボ群で、あらかじめ主要な評価項目と決めていた記憶の課題の成績は、群間差-0.03(95%CI -0.11〜0.05、P=.47)で差がつきませんでした。副次的な項目でも同様で、著者らは「より高い量での検証が必要」としています [3] 。
  • 安全性は、マウスの28日間の試験と、30人が3か月とった試験で確かめられています。マウスでは体調や行動の変化がみられず、臓器を調べても腫瘍や線維化は増えていません [4] 。
  • ネズミにスペルミジンを与えた研究では、寿命や心臓の働きについての報告があります [5] 。こちらは動物での結果です。

小さい試験で出た差が、大きい試験では再現されない。研究ではよくある形で、いまのスペルミジンはその段階にあります。

取り入れ方のヒント

  • 食品からは小麦胚芽・納豆・大豆・きのこ・熟成チーズに含まれます。人での試験で使われたのは小麦胚芽から作ったエキスでした。
  • 試験で使われた量は1日0.9〜1.2mgです。食事からとる量はこれより多く見積もられることがありますが、測り方が違うため単純には比べられません。
  • サプリの多くは小麦胚芽が原料です。小麦にアレルギーのある方は原材料の表示を確認してください。
  • もの忘れが気になるときの考え方は、年齢ともの忘れのページにまとめています。