まず押さえたいポイント

エルゴチオネインは、きのこに多い硫黄入りのアミノ酸です。人の体では作れず、食べたぶんが専用の輸送体で細胞に取り込まれます [1] 。

マウスでは寿命が延びたと報告されている一方、人での試験は19人と147人の2本にとどまります。

なぜ「年齢ともの忘れ」と関係するの?

2005年、SLC22A4という遺伝子が作るたんぱく質の本来の輸送対象がエルゴチオネインであることが分かりました [1] 。この輸送体を持つ細胞は中に高い濃度でためこみ、持たない細胞の膜はこの成分をほとんど通しません。自分で作れない物質のために、体が運び入れる仕組みを用意している点が注目されてきました。

もの忘れとの関係が調べられるようになったのは、脳でもこの輸送体が働いているとみられるためです。2018年には、長期の健康に関わる栄養素をまとめた「長寿ビタミン」という枠の候補として、エルゴチオネインが筆頭に挙げられました [6] 。こちらは提案であって、分類が決まったわけではありません。

きのこに含まれるエルゴチオネインが、専用の輸送体で細胞に取り込まれ、脳の海馬でも研究されていることを示した図

研究では何がわかっている?

  • 生後7週のオスのマウスに、飲み水で1日4〜5mg/kgのエルゴチオネインを生涯与えた研究では、寿命が延びたと報告されています [2] 。88週齢の時点で体重・脂肪量・移動の速さの低下が対照群より小さく、学習と記憶の課題でも成績の下がり方がゆるやかでした。海馬で新しい神経細胞が作られる働きの低下も抑えられていました。
  • 人での予備試験は、シンガポール国立大学が行ったものです。軽度認知障害のある60歳以上19人に、25mg入りカプセルかプラセボを週3回・1年間とってもらいました。血球数・腎機能・肝機能の指標は変わらず、聴覚性言語学習検査の成績と、神経の損傷を示すニューロフィラメント軽鎖の値に群の違いが報告されています [3] 。参加者19人の予備試験です。
  • 規模が大きいほうは、もの忘れの自覚がある55〜79歳147人に1日10mgか25mg、あるいはプラセボを16週間とってもらった試験です。主要な評価項目と決めていた記憶の複合スコアは、25mg群で4週時点の群内の改善がみられたものの、16週まで続きませんでした [4] 。血中濃度は量に応じて上がり、主観的な予定の記憶と寝つきでは25mgで差が出ています。研究資金は原料メーカーが出しており、著者の1人が同社に所属しています。
  • 日本では、金沢大学らのグループがマウスの実験とあわせて、5mg錠を12週間とった人の血清を再解析しています。血清の小胞に含まれるリン酸化TrkBというたんぱく質の比率が、エルゴチオネイン群で高く、認知機能検査の一部のスコアと相関したと報告されました [5] 。測っているのは血液中の指標で、脳を直接調べたものではありません。

マウスで先に大きな結果が出て、人ではまだ人数が足りていない。エルゴチオネインの研究は、いまその段階にあります。

取り入れ方のヒント

  • 食品からはきのこでとれます。含まれる量は種類によって50倍ちかく開きがあり、日本ではタモギタケに多いとされています。
  • サプリで使われている量は、日本の機能性表示食品の届出で1日5mg、海外の試験で1日10mgまたは25mgです。届出の目安量と試験で使われた量は決められ方が違うため、そのまま多い少ないを比べられません。
  • 原料には、きのこから取り出したものと発酵で作ったものがあります。きのこのアレルギーがある方は、何を原料にした製品かを表示で確かめてください。
  • 年齢によるもの忘れに何が関わるかは、年齢ともの忘れのカテゴリページで整理しています。