2026年9月9日、マツキヨココカラ&カンパニーが、プラズマ乳酸菌とラクトフェリンの2つを機能性関与成分にしたのど飴を10月10日に発売すると発表しました。届出番号はK638、税込429円。「W機能性表示食品」という呼び方で、免疫とのどの乾燥感の2つの表示を1つの製品に載せています [1] 。

この数年で、プラズマ乳酸菌の商品は売り場に増えました。キリンホールディングスの発表では、この菌を使った商品の2025年の販売金額は280億円を超え、サプリメントは前年比約3割増でした [2] 。健康食品の市場全体は、矢野経済研究所の推計で2025年度が9,147億円と前年度から0.8%減る見込みです。同じ資料は、定期購入をやめる動きの一方で免疫サポート関連の需要が広がった、と整理しています [3] 。縮む市場のなかで、免疫の棚だけが伸びている形です。

「免疫ケア」の4文字は覚えやすい言葉です。届出に書かれた表示文は、もっと長くて地味です。その表示文が何を約束し、根拠になった試験が何を測ったのかを、順にたどります。

免疫の機能性表示の根拠になった試験が測った2つのこと=血液の中にいるpDCという細胞と、せき・熱っぽさがあった日を記録した日数を、虫めがねとカレンダーで並べて示した図
免疫の機能性表示の根拠になった試験が測った2つのこと=血液の中にいるpDCという細胞と、せき・熱っぽさがあった日を記録した日数を、虫めがねとカレンダーで並べて示した図

表示文は「維持に役立つ」で止まっている

免疫に関する機能性表示食品が初めて受理されたのは2020年8月7日で、対象はキリングループの飲料とサプリメント、関与成分はプラズマ乳酸菌でした [4] 。それから6年、表示文は1文字も変わっていません。

「プラズマ乳酸菌はpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に働きかけ、健康な人の免疫機能の維持に役立つことが報告されています」 [1] [4] 。

読み方のポイントは3つあります。主語は「pDCに働きかけ」という細胞の話で始まること。対象が「健康な人」に限られること。約束しているのが「維持」であって、風邪をひかないことではないこと。

この書き方は制度が決めています。機能性表示食品は、事業者が科学的根拠を消費者庁に届け出て自らの責任で表示する制度で、国が中身を審査するわけではありません [7] 。対象は病気にかかっていない人で、未成年・妊産婦・授乳婦は含まれません。表示できるのは健康の維持や増進に役立つ旨までで、病気のリスクを下げる旨は書けない決まりです [6] 。だから「感染を防ぐ」とは書けず、「維持に役立つ」で止まります。

一方の「免疫ケア」は、届出の文言ではありません。キリンが広めてきた呼び名で、同社の調査では2023年に国内の認知率が75%以上に達しました。プラズマ乳酸菌を配合した機能性表示食品は、2023年12月末の時点で16社59商品に広がっています [5] 。売り場で目に入る4文字と、パッケージの裏にある1文は、別のものとして読んだほうが安全です。

pDCという細胞と、その表面の「目印」

pDCは血液の中にごく少数いる免疫の細胞で、ウイルスが体に入ると、インターフェロンという警報役の物質を大量に出します。周りの細胞に「ウイルスが来た」と知らせる、見張り番のような細胞です。

プラズマ乳酸菌の正体は、Lactococcus lactis JCM5805という球形の乳酸菌の1株です。キリンの研究部門が31菌種125株の乳酸菌を調べ、pDCを直接活性化する株として見つけました [8] 。2012年の論文では、この菌がpDCを活性化してインターフェロンを作らせること、菌のDNAを感じ取るTLR9という受容体を通る仕組みだと報告されています [9] 。2013年には、人の血液から取り出したpDCでも同じ活性化が確かめられました。同じ論文にある、この菌で発酵させたヨーグルトを飲む比較試験では、血液中のpDCの活性が高く保たれたと報告されています [10] 。

試験では「pDCの活性」を、細胞の表面に出るたんぱく質の量で測ります。採血して、pDCの表面のCD86とHLA-DRという2つのたんぱく質を数えます。細胞が目を覚ましているときに表面に増える目印で、この量が多いほど活性が高いと判断します。表示文の「pDCに働きかけ」は、この目印の量の話です。

咳と熱っぽさの日数を、日記で数えた

目印の量だけでは、体調との関係は分かりません。そこで試験では、参加者に日記をつけてもらい、咳や熱っぽさがあった日を数えました。

2015年に出た試験がその代表です。冬の10週間、213人を2群に分け、JCM5805で作ったヨーグルトまたはプラセボの飲料を毎日とってもらいました。ヨーグルト群では、インフルエンザ様の症状として数えた咳と熱っぽさの累積日数がプラセボ群より少なかったと報告されています [11] 。キリンと国立感染症研究所の共同研究です。

こうした試験を集めた解析が、2025年11月に出ました。健康な成人を対象にした8本の比較試験のうち7本から参加者ごとの元データを取り寄せ、同じ条件で解析し直したメタ解析です [12] 。619人のデータで、CD86とHLA-DRの発現はプラセボ群より高く保たれていました。効果の大きさを表す標準化平均差は0.37と0.47で、小さめから中くらいの差です。555人のデータで見た症状は、咳の累積日数が28日あたり0.69日、熱っぽさが0.26日、プラセボ群より少ないという結果でした。

4週間で咳の日が1日弱、熱っぽい日が4分の1日ほど少ない。これが「免疫機能の維持に役立つ」の中身です。熱っぽさの95%信頼区間は−0.52日から−0.0038日で、上端は差がないところにほとんど接しています。著者6人のうち3人はキリンホールディングスの社員です [12] 。

試験で使われた量と同じ、1日1,000億個

キリンのサプリメントは、1日1回4粒に1,000億個のプラズマ乳酸菌を含みます。原材料名には「乳酸菌殺菌乾燥粉末」とあり、加熱殺菌した菌体です [13] 。生きて腸に届く乳酸菌の話とは別で、ポストバイオティクスと呼ばれる仲間に入ります。pDCが反応するのは菌のDNAなので、菌が生きている必要はない。これが、加熱殺菌した菌体でよいとされる理由です [9] 。

試験の量も、同じ1,000億個です。大学の運動部の男性51人に加熱殺菌した菌1,000億個のカプセルを13日間とってもらった2018年の試験も [14] 、2025年のメタ解析に集められた試験も、1日1,000億個を基本にしています [12] 。ラベルの量と試験の量が同じというのは、当たり前のようで、サプリではそうでないことが珍しくありません。

病気の人の試験は、表示の外にある

軽症の新型コロナ患者100人を対象にした長崎大学などの多施設試験の結果が、2025年10月に出ました。あらかじめ決めていた主要な評価項目である8つの自覚症状の合計点には、プラセボ群との差がありませんでした。副次的に見たウイルス量の減り方と、嗅覚・味覚の症状では差が報告されています [15] 。

この結果をどう読むにせよ、機能性表示食品の対象は病気にかかっていない人です [6] 。患者を対象にした試験は、健康な人向けのこの表示の根拠にはなりません。2026年5月には、ベトナムの医療従事者に4週間とってもらった試験で、発熱と疲れの日数が少なかったという報告も出ています [16] 。海外の試験を含め、この菌の研究の多くにキリンの研究者が関わっています。企業が自社の素材を調べるのは自然なことですが、独立した研究者による追試はまだ少ない、という事実は覚えておいてよいでしょう。

のど飴の「W」は、2つの届出文を並べたもの

冒頭ののど飴に戻ります。「W機能性表示食品」の表示文は2つあり、ラクトフェリンのほうは「健康な人の空気の乾燥に伴う一時的なのどの乾燥感を軽減する機能が報告されています」です [1] 。免疫の表示とは主語も対象も別で、成分ごとに独立した文として書かれています。2つの成分を一緒にとったときの試験を指す言葉ではありません。ラクトフェリンそのものについてはラクトフェリンのページにまとめています。

売り場で確かめる目安

  • 届出番号:パッケージの表にある「K638」のような番号を、消費者庁の届出情報検索に入れると、表示文と根拠の要約が読めます [17] 。
  • 表示文の主語:「pDCに働きかけ」「免疫機能の維持に役立つ」まで。風邪をひかない、感染を防ぐ、とは書かれていません [1] [4] 。
  • 1日の量:プラズマ乳酸菌1,000億個。サプリなら4粒、飲料やヨーグルトなら1本・1個の表示を見ます [13] 。
  • 生きた菌ではない:加熱殺菌した菌体で、冷蔵の有無や賞味期限は生菌の製品と考え方が違います [13] 。
  • 対象:病気にかかっていない大人。熱がある、症状が長引く、というときは食品で様子を見ずに受診してください [6] 。

持病のある方、免疫の働きを抑える薬を飲んでいる方、妊娠・授乳中の方は、始める前に医師・薬剤師にご相談ください。

この記事で確かめた数字

  • 2026年9月9日にプラズマ乳酸菌とラクトフェリンのW機能性表示食品ののど飴が発表され、10月10日発売。届出番号K638 [1]
  • プラズマ乳酸菌を使った商品の2025年の販売金額は280億円超。サプリメントは前年比約3割増 [2]
  • 健康食品市場は2025年度に9,147億円で前年度比0.8%減の見込み。免疫サポート関連の需要は拡大 [3]
  • 免疫の機能性表示が初めて受理されたのは2020年8月7日 [4]
  • 「免疫ケア」の認知率は2023年に75%以上。配合商品は2023年12月末で16社59商品 [5]
  • 2015年の試験は213人・10週間。咳と熱っぽさの累積日数がヨーグルト群で少なかった [11]
  • 2025年のメタ解析は8本の試験・619人。CD86とHLA-DRの標準化平均差は0.37と0.47。咳は28日あたり0.69日、熱っぽさは0.26日少ない [12]
  • サプリの1日量は4粒で1,000億個。原材料は乳酸菌殺菌乾燥粉末 [13]
  • 軽症コロナ患者100人の試験では、主要な評価項目に差なし [15]

パッケージの4文字が約束しているのは、その裏にある1文の範囲だけです。1文の中身は、血液の細胞の目印が保たれ、4週間で咳の日が1日弱減った、という試験の結果でした。そこまで読んで買うか、4文字だけで買うか。どちらでも値段は同じですが、期待する大きさは変わります。

成分そのものの説明はプラズマ乳酸菌、免疫との関係を調べた試験の一覧は免疫を保ちたい×プラズマ乳酸菌にまとめています。