NMNのサプリを並べて見ると、1日の量は製品によってばらばらです。100mgのものもあれば、1000mgをうたうものもあります。どれが「正しい量」なのか、パッケージだけでは判断できません。

日本には、NMNの1日量を決めた公的な基準がありません。ビタミンやミネラルのように、国が推奨量や上限量を出している成分ではないためです。

現時点で、数字が明確な手がかりとなるのは、EUの食品安全機関(EFSA)が2026年5月11日に公表した評価です。サプリメントで1日300mgまで使う想定について、成人(妊娠・授乳中の人を除く)で安全上の懸念はないと結論しました [4] 。

NMNの1日量として示されている2つの数字。日本の試験で使われた1日250mgと、EUの機関が安全性を評価した1日300mgを横棒の長さでくらべた図
NMNの1日量として示されている2つの数字。日本の試験で使われた1日250mgと、EUの機関が安全性を評価した1日300mgを横棒の長さでくらべた図

日本でNMNが食品として売られている根拠は、2019年の審議にある

出発点は、厚生労働省が2019年9月13日に開いた、原材料をどう区分するかを話し合うワーキンググループです。この会議の議事概要には、NMNについて「判断基準」に当てはまる項目がなく、食品として扱えると記録されています。そのうえで、医薬品的な効き目をうたわない限り、もっぱら医薬品として扱う原材料にはしない、と整理されました [1] 。

日本では、原材料が「もっぱら医薬品」に当たるかどうかで、食品として扱えるかが決まります。NMNはこの審議を経て、食品として扱える側に分けられました。

ここで決まったのは、食品として販売できるかどうかです。どれだけとればよいか、という量の話は、この審議では扱われていません。日本の売り場に並ぶ配合量の幅は、公的な数字がないところで各社が決めた結果です。

アメリカでは一度「サプリではない」とされ、2025年に扱いが見直された

同じ成分でも、国をまたぐと扱いが変わります。

アメリカのFDA(食品医薬品局)は2022年11月、NMNをサプリメントの成分として認めない判断を示しました。新しい成分の届出(NDI通知1247)への回答という形です [2] 。米国には、先に医薬品としての臨床研究が認められた成分は、あとからサプリとして売れないという決まりがあるためです。

この判断は2025年に覆ります。FDAは2025年9月29日付の2通の手紙で、NMNはサプリメントの定義から除外されない、と回答しました [3] 。根拠は、医薬品としての研究が認められるより前からNMNが米国でサプリとして売られていたという事実で、FDAは「遅くとも2017年には販売されていた証拠を把握している」と述べています [2] 。

ただし、これで手続きが要らなくなったわけではありません。NMNを売る各社は、原料を同じ供給元から調達する場合を除いて、引き続き新規成分としての届出が必要です [3] 。

3年ほどのあいだに、同じ成分が販売できない扱いから、販売可能な扱いへと変わりました。NMNそのものは、2022年当時から何も変わっていません。

EUの評価が示した線は「1日300mg」

EFSAが2026年5月に出した意見書は、化学合成されたβ-NMNについて、サプリメントで「ナイアシンの供給源」として1日300mgまで使う想定を審査したものです [4] 。対象は成人で、妊娠中・授乳中の人は最初から外れています [4] 。

評価の中身は次のとおりです [4] 。

  • 人を対象に、同じモル量のニコチンアミドと比較した試験の結果から、換算係数を1として扱えると判断された。この換算だと、1日300mgのβ-NMNはニコチンアミド109.7mg分にあたる。
  • この量は、成人のナイアシンの基準摂取量(PRI)のおよそ5倍。ただしニコチンアミドの上限量である1日900mgは下回る。
  • 遺伝毒性についての懸念は認められなかった。
  • ラットに90日間、反復して投与した試験では生殖器への影響が見られ、無毒性量(NOAEL)は体重1kgあたり1日400mgと決められた。想定される摂取量との開き(暴露マージン)は93。

結論は、提案された使い方の条件では成人(妊娠・授乳中を除く)にとって安全であり、この原料はナイアシンの供給源になる、というものでした [4] 。

300mgは「ここまでなら安全性の面で心配が少ない」という線であって、「ここまでとれば何かが起きる」という線ではありません。EFSAが審査したのは安全性で、体に何が起きるかは今回の評価に含まれていません。

人の試験で使われてきたのは1日250mg。日本の12週間の試験は主要な評価項目で差がつかなかった

日本で行われた試験のひとつが、2024年に報告されています。高齢者60人を、NMNを1日250mgとる群と、見た目が同じ食品(プラセボ)をとる群に分け、12週間くらべた二重盲検の試験です [5] 。

主要な評価項目は、その場での足踏みの回数を測るステッピングテストでした。結果は、4週でも12週でも2群に有意な差がつきませんでした [5] 。

副次的な評価では、いくつかの項目で差がつきました。12週後、NMNをとった群は4m歩行の時間が短く、血液中のNAD+とその代謝物が高く、ピッツバーグ睡眠質問票の「日中の眠気」と全体スコアが良好でした。試験食品によると考えられる有害な影響は観察されていません [5] 。

副次的な評価も試験の計画には含まれますが、「これで判定する」とあらかじめ定めた主要な評価項目ではありません。たくさん測れば、そのうちのどれかに差が出ることもあります。主要な評価項目で差がつかなかった試験は、まず「その項目では確かめられなかった」と読むのが基本です。

NMNと血圧の関係を複数の試験からまとめた2026年の研究も、人での効果はまだはっきりせず、さらに検討が必要だとしています [6] 。NAD+を補う成分(NMNやニコチンアミドリボシドなど)を動物と人で調べた2026年の研究も、体の中の変化は起きるものの、人での結果にはばらつきがあるとまとめています [7] 。

血液のNAD+が上がっても、体の働きまで変わるかどうかは、人の試験でこれから確かめていく段階です。詳しくはNMNとエイジングケアに出典つきでまとめています。同じNAD+の材料で道すじが違うニコチンアミドリボシドの解説もあります。

妊娠中・授乳中は、そもそも評価の外にある

EFSAの評価は、対象を成人としたうえで、妊娠中・授乳中の人を明確に除いています [4] 。

長く飲み続けたときのデータも限られています。この記事で挙げた試験も、ラットは90日間、人は12週間までです [4] [5] 。

ラベルでは1日量と、その数字の出どころを見る

  • 1日量が何mgかを確かめます。人の試験で使われてきたのは1日250mg程度 [5] 、EUが安全性を評価した想定は1日300mgまで [4] です。この幅から大きく離れた数字は、どこから来た量なのかを考える材料になります。
  • 「海外で認められた成分」という説明は、制度上の扱いを指しています。米国では2022年から2025年のあいだ、同じNMNが売れない状態でした [2] [3] 。
  • 妊娠中・授乳中の人、持病のある人、薬を飲んでいる人は、量を決める前に医師・薬剤師に相談してください。注意点はNMNにまとめています。
  • 価格が高いからといって、配合量が多いとも、研究の裏づけが厚いとも限りません。価格を1日分の量で割り、「1日あたりいくらか」にすると見比べやすくなります。

エイジングケア(若々しさ)と栄養には、ほかに研究されている成分も並べています。公的な数字がどうやって決まっているかをたどる読み方は、葉酸の「1日400µg」でも取り上げています。

NMNの1日量には、いま2つの数字があります。人で試された250mgと、安全性が評価された300mgです。どちらも「これだけとれば若々しくなる」と示した数字ではありません。売り場で迷ったときは、まず裏面に記載されたmg数を確認し、この2つの数字と見くらべるところから始められます。