ビオチンのサプリには、体調とは別のところで、思わぬ問題が起きることがあります。飲んでいる間、血液検査の数値が実際とずれて出ることがあるのです。髪や爪のために続けている人ほど、採血の前に思い出してほしい話です。

検査の「つかまえる仕掛け」に、サプリのビオチンが割り込みます。
検査の「つかまえる仕掛け」に、サプリのビオチンが割り込みます。

なぜ検査の数値がずれる?

多くの血液検査は、測りたい物質を抗体(目印になるたんぱく質)で捉え、その量を測定しています。このとき、捉えたものを引き上げる仕掛けとして、ビオチンと、ビオチンにぴったりくっつくたんぱく質の組み合わせが広く使われています。面ファスナー(マジックテープ)のフックとループのような関係です。

サプリで多めのビオチンをとっていると、このループ側に、目的の物質とは関係のないビオチンが先にくっついてしまいます。その結果、測定値が実際の状態からずれてしまいます。ずれる向きは検査の方式によって変わり、実際より高く出ることも、低く出ることもあると報告されています [2] 。

実際にどんな取り違えが起きている?

  • 高用量のビオチンを投与されていた生後1週間の赤ちゃんで、甲状腺の検査値が甲状腺の働きすぎを示したものの、体の状態にその兆候はなく、別の方式で測り直すと正常でした [3] 。
  • 前立腺の状態を見る検査(PSA)でも、ビオチンのサプリが測定値に影響した例が報告されています [4] 。
  • 甲状腺の検査についての専門家グループの手引きは、症状と検査値が食い違うときは、めずらしい病気と判断する前に、まず測定の乱れを除外するよう求めています [1] 。

どのくらいの量から乱れる?

検査室で使う測定項目ごとに、ビオチンをどのくらいまで含むと結果が乱れるかを、目安量から高用量まで段階的に調べた研究があります。すべての項目が乱れるわけではない一方、従来の注意喚起で示されていた摂取量より少なくても乱れる項目や、そもそも注意喚起が出ていなかった項目が3つ見つかりました [2] 。一律に「この量までなら安全」と判断するのは難しい、というのが実情です。

検査の予定があるときにできること

健康診断や採血の予定があるときは、ビオチンを含むサプリを飲んでいることを、医師や検査を受ける窓口に伝えてください。これがいちばん確実な備えです。

  • 検査の前に一時的にやめるよう案内されることがあります。どのくらい空けるかは検査項目や製品によって変わるため、受ける医療機関の指示に従ってください。
  • ビオチンは単独の製品だけでなく、マルチビタミンや髪・爪向けの製品にも入っています。飲んでいる自覚がないこともあるので、手元の製品の成分表示を一度確認しておくと安心です。
  • 検査値と自分の体調が食い違うと感じたときにも、サプリのことを伝えると、原因の切り分けが早くなります。

そもそも補う必要があるのか

ビオチンは卵黄やレバー、ナッツ、豆類、きのこなど幅広い食品に含まれ、普段の食事で足りなくなることはあまりありません。肌・髪・爪のために上乗せする使い方は、不足していない人での裏づけが限られると指摘されています [5] 。詳しくは ビオチンの基礎ページ にまとめています。

困るのはビオチンそのものよりも、飲んでいることが伝わらないまま、数字だけが独り歩きすることです。お薬手帳やスマホのメモにサプリの名前も書き添えておくと、必要なときにすぐ確認してもらえます。